『ロンドンの美しい町』晶文社 1979年初版 鶴田 静のデビュー作品です!
1976年、ロンドンにいた私は、ロンドン市公団住宅の空き家に住んだ。大勢の多彩な人種が無断で空き室に入り込み、室内をきれいにリモデルし、住宅問題の一つのテーゼとして、市民運動に盛り上げていた。その1年以上の体験談。それは私を、今ある全ての社会的課題に目と心を向ける揮発点となった。裁判所でのヒアリングに行き、度々のミーティングやキャンベーンやデモに参加し、「スクウォッター」と名付けられた人々と連帯し、家族のように支え合っていた。中には当時の労働大臣の息子の議員が週末の住人になったり、詩人、画家、博士号の学者、ミュージシャン(後の「クラッシュ」のジョー・ストラマ)など、環境問題活動家、フェミニスト、身障者、一人親など、苦しい中にもユートピア的な愉しさがあった。出版当初から全国の新聞記事や多くの書評となり、話題となった。現在の日本の空き家事情にも想いがいく。
書評・紹介 朝日新聞「語る」『空き家乗っ取り住む』/毎日新聞「私の仕事」『空き家乗っ取り交遊録です』/東京タイムズ「若者広場」『学んだ本当の生き方』/東京新聞「新着の顔」『空き家開放運動を』/南日本新聞インタビュー「私の新著」『自立した女への自己変革』/山形新聞「著者探訪」『空き家の解放をぜひー異国の体験で自己変革』/新潟日報「作品と人と」『空き家開放運動ー異国の体験で自己変革』/富山新聞『空き家開放運動と食品公害に関心』/信濃毎日新聞「ひと ほん」『貴重な体験通して』/岐阜日日新聞『一切差別のない生活/拒食捨て本質的な生き方を』
朝日ジャーナル「五00字紹介」1980.1.25/ 週刊朝日 149『空き家乗っ取り人間的な生活』/母の友(福音館書店)/わいふ誌162号「特集 ウサギ小屋からの脱出」『住宅難への抗議』/週刊時事「ほん・BOOKS・本} 『生きる場所「住居」を問い直す』/JUNON (主婦と生活社)「住宅ローン どこ吹く風のロンドンっ子」奥村典子
ロンドンで書いていた生原稿があります。当時日本の原稿用紙が無かったので、ソーホー街の中国の雑貨店で、500字詰めの原稿用紙を買って鉛筆で書いた。日本の用紙の半分の薄さなので、破れないようにして。左枠外に銘柄が書かれている。第一稿の最終頁は170(原稿前半カット)。
ところで当時のその店には、1976年9月9日に亡くなった毛沢東の横たわる写真が外壁に大きく張られていました。
ベジタリアン ライフ ノート 地球のリズムで生きてみる
文化出版局 1988年5月初版 213頁
文・鶴田 静 イラスト・原田紀子 撮影・エドワード・レビンソン/澤井秀夫/文化出版局写真課/
装幀・平野甲賀
本書は「ベジタリアン」の食についての本ではありません。春夏秋冬の季節に合わせた暮らし方全般について、日々の小さな物事から、地球に優しい、人間として責任のある生き方について、優しく、ユーモラスに描いた短文の集まりです。
写真とイラストをふんだんに使い、装幀の大家・平野甲賀氏による、手触り良く気持ちの良いどっしりとした本になりました。皆様のお力のおかげで、大変好評を得ることが出来ました。驚いたことに、文化出版局のビルの上から、本のタイトルを書いた大きな長い布が垂れ下げられました。
書評・紹介 「アサヒタウンズ」心に残る1冊 1988.7「自由な頃で生きる」/京都新聞「ほん」/南日本新聞社「くらしの図書室」/ 全私学新聞/熊本日日新聞/沖縄タイムス 図書室「自然を取り戻す生き方」高知新聞 その他
そして8年後、本書は「女性文庫」の一書として、文庫化されました。イラストや写真は除き、省略したり、タイトル変更項目もありますが、283頁のボリュームです。
気持ちのいい生活 地球のリズムで生きてみる 学陽書房 「女性文庫」1996, 2月初版
目次
春……いつもスマイルーーほほえみは優しさ 女神の怒りーーチェルノブイリの子どもたち
夏…….清浄な地球を袋に詰めるーー多用袋を作る 花の妙薬ーー体と心の関係は 秋……月からの贈り物ーー妊娠と出産
本は道具ーー使いやすさの工夫 冬優しいエネルギーーー太陽熱を使いたい 春を待つのはーー鳥たちと猫たちと (両書より)
田園に暮す Living the Organic Life
柴田書店 1994年初版 B5判
168頁(カラー・モノクロ 写真・エドワード・レビンソン)
写真77頁 料理70点)
静謐な田園風景のモノクローム写真を中心に、田園生活の楽しさを語るエッセイ。 カラー写真の料理も満載。写真を見ているだけで心安らかになる平和な本。
目次ーー1. 田園生活の四季 2. 牧歌的だったロンドン
書評と紹介 読売新聞「本と人」1994,5,9 /コンパ 6月号 評者・小池聖子/ 千葉日報「地球家族」インタビュー一面 写真多数/ 1997.10.20
ふぇみん(夫人民主新聞3.4号)7月 /ラ・セーヌ(学研)7月号(ピーター・メイル氏(『南仏』プロパンスの12ヶ月著者)と対談> / ハーブ誌(誠文堂新光社刊) 6月号 / ウッディ・ライフ/ クロワッサン 3.25号/LEENO. 5 その他多数
本書が文庫本になりました。
『田園に暮す』文春文庫+PLUS 株式会社文藝春秋 2001年初版
初版の時は借りた古民家に住んでいましたが、文庫になる時には土地を購入し、家を建てる予定になっていました。そこで本書には、最後に第8章
「夢は続いていく」が新たに加わりました。2004年から私たちで設計した新築の家に住んでいます。そしてこの続きとも言える本が、文春文庫+PLUSから発行されます。2006年
『いま、自然を生きる』
カバー写真、各章頁モノクロ写真8枚挿入 写真:エドワード・レビンソン
都会でなく田舎で生きるとはどういうことなのか。著者の体験から、さまざまな課 題について考える。住居とは、家族とは、コミュニティーとは、エコロジーとは、加齢とは。大自然の中で生きる喜びの賛歌。アメリカでの見聞や作家たちが書き残した彼らの暮らしぶりも取り入れているので、田舎に住みたい人々の参考になると思う。 目次から 空と大地の真ん中で /燕の故郷 /太陽は世界樹に /秋の祝宴/蓬を摘むナターシャ /良い人生との愛と別れ
(国立国語研究所著作物言語データベースKOTONOHA採録
書評 「大自然の中に安らぎ 若い層にも共感呼ぶ」
「クロワッサン」平凡社 97年2月10日号
「自然と共に生きることの意味を見つめ直す」「日本農業新聞」97年1月15日
緑の暮らしに癒されて 221頁 大和書 房 1997年初版
緑の家で生きる—それは心もからだも癒されること。花や野菜や、鳥や動物ととも に、青い空と緑の大地に抱かれて暮らす心地よさ。緑の暮らしの、衣食住について、楽しいエッセイと、おいしくてシンプルな野菜料理のレシピを併載。都会生 活に自然を取り入れるヒントにもなる。
☆本書のある箇所の文章は、ここ数年の入試問題に使 われ、教科書のサブテキストに使われていました。
書評 「LEE」集英社 97年9月号 「田舎暮らしの本」宝島社 湯川豊彦氏 97年10月号
「Nature Land 97年8月号 「citta」芸文社 97年 9月号 その他
『母 なる自然の食卓—大地のメッセージ』
東洋書林 2004年初版
A5変型 196頁・内カラー写真68頁 ハードカバー
写真:エドワード・レビンソン
エッセイ+料理 レシピ77点
「目を閉じて、季節の風と光を感じる。土の匂いをかぐ。〃母なる 自然〃の声を聴く—。ライフ・スタイルの基本を見つめ直し、か らだの芯から生きる力を呼び起こす、エッセイと77品の料理。」
目次から 春の食卓 誕生のドラマ/ソーラー・フラワー/桜尽くし/父と母の野菜/ 大切な生きる場所 他 夏の食卓 雨の行方/モリスの庭で/幸福なトマト/命の重み 他 秋の食卓 実は身を作る/秋の白い贈り物/心の喫茶店/風土と地球と 他 冬の食卓 焼いた林檎/冬のお客様へ/豆腐の縁は異なもの/家族を思う時/ 新世紀への希望 他
レシピの一部 桜ご飯/すかんぽのスープ/菜の花とパスタのサラダ/たけのこと 根三つ葉のパイ/茄子の和風バーグ/かぼちゃと夏野菜のカレー/ そば粉のパンケーキ/柿のマフィン/かぼちゃのピローグ/大根葉 のご飯/豆腐マヨネーズ/夫のたっぷりスープ/娘のジュリエンヌ ・スープ/白菜の煮込み鍋・スパイス風味 他
朝日新聞 2004.6.13日付読書欄 「……四季折々の大地の恵みに素直に感謝しながら食卓を囲む幸福 感、単純明快で和やかな生活の大切さを本書は自然体で教えてくれ る。……写真家の夫が自然の中で撮影した77品の料理がカンバス に咲いた花のように楽しい」
毎日新聞 2004.6.6 生活欄 読む 読売新聞 7.1 夕刊 「women@ぐるめ」欄「季節ごとの自然の恵みは美しく、四季ある国に暮らす喜びが伝わ ってくる。……情感豊につづられたエッセーは滋味に富む」
『花時間』2004.8月号 角川書店 著者インタビュー「この本の著者に会いたい」 「四季の野菜こそ毎日の暮らしに喜びをくれる想像力の源」
「母なる自然の食卓」がベジタリアンの文化誌」と相次いで 韓国語に翻訳出版されました。訳者は2冊ともソウルに住む、孫聖愛さんです。今韓国では、ベジタリアンが増え、有機栽培・無農薬食品のお店も増えている そうです。!!
犬がくれた幸福』岩波書店刊 2006年初刊 写真・エドワード・レビンソン
17年間に渡る愛犬との波乱に 富んだ物語です。以前から、わが家でのワークショップにご参加の方がたの アイドルでした。そのサニーへの沢山のお便りや写真を ありがとうございました。 エドによる犬たちの写真も載っています。ぜひ、ご高読 下さい。
戌年に贈る、深い感動を呼ぶ珠玉のエッセイ 目次 1章 幸福の始まり 2章 犬たちのナチュラルライフ 3章 食事は青空の下で 4章 犬と育った少女 5章 家族の計画 6章 愛するものを残して 7 章 幸福は続く 8章 永遠の家族 エピローグ 花を咲かせる天使
著者から 子犬たちと著者夫婦の織り成す家族の愛の物語です。 東京から農村に移住して飼い始めた二匹の柴犬の雑種ハッピーとサニー。サニーは老犬になり、17歳で逝きました。 その17年間の犬との幸せな暮らしから、著者と夫、その家族の人生を述懐し、人生の意味を考えます。 動物や植物を「家族」として暮らす幸せをあなたにも願っています。 オビより 「ある日やってきた白い子犬が、夫婦二人だけの生活を根本から変えた。犬の引き起こす事件や出来事は、ベジタリアンである夫婦にペットと人間の文化を再考 させる。そして犬との人生は、深遠なる『幸福』の存在を教えてくれた。」* 夫エドワード・レビンソンによる犬たちの写真でページを飾っています。
紹介 書評 アライブ地 球生物会議 2006/9-10 / 福音館「母の友」誌2006/11月号 / 読売新聞「本よみうり堂」トレンド館 2006.8.9 その他
ビートルズとミュージック・シーンの゛カリスマ゛編集集団フロム・ビーの メルマガ「ビーメール」で、本書をご紹介下さいました。 ホームページ「ビートピア」はこちらへ。
http://homepage2.nifty.com/beatopia/
『犬がくれた幸福』というタイトル、犬好きなら納得してしまいますよね。 毎日、就寝前に少しずつ読みましたが、エピソードひとつひとつに、納得したり、 羨んだり、反省したり。犬を通じて人生まで教わってしまいました。なんだかと ても身近に感じる話なので、本を読んでいるというよりは、夜中にうたた寝をし たときに夢を見ているような感じで、犬の嫉妬とか、ベジ家庭の犬のお食事とか、 放浪するオスのお話とか、犬がくれるいろ~んな幸せを追体験させてもらいまし た。そんな幸福がいっぱいあるから、別れはとっても寂しい…。 この原稿を書いていて(なんとかビートルズと関連づけようとして)、さいた ま新都心のジョン・レノン・ミュージアムの展示スペースに入るとすぐに、ジョ ンが愛犬サリーを抱いた写真があるのを思い出しました。両親と離別し孤独な少 年時代をおくったジョンにとって、サリーがどれほどの幸福をくれる存在だった のか…。犬と暮らしたことのある方なら実感としてわかると思うのですが、犬と 暮らしたことのない方はこの本を読めばなんとなくわかるかもしれません。 じつはうちにも犬がいて、日本古来からの柴犬のくせにバタ付パンが大好きで、 1日1度のプチ散歩を楽しむ以外は、小さなマンションの一室でじっとお留守番。 日をまたいで家をあける時は、やむなくペットホテルにご宿泊という、「アーバ ンライフ」を「エンジョイ」。かわいそうだな~とも思うけど、再会するときは、 きまってこっちが恥ずかしくなるくらい全身で喜びを表現してくれるのです。そ んなときにすべてが許されたようで幸福を感じます。ということで、映画『サー ジェント・ペッパー/ぼくの友だち』に続き、この本もまたビートリーで犬好き のみなさんにおすすめの一冊です。 (ひろた)
茶箱のなかの宝もの 岩波書店刊 2007年初版 四六判 216頁 カバー絵/各章の挿画/鶴田静作
以前タイトルだけご紹介していた「上の部屋のシ イカ」福音館書店「母の友」誌連載エッセイが形を変えて一 冊の本に。(教材使用)
目次 はじめに
1最初のアルバム 2 家業は家畜医院 3 仕立て直しの服 4 涙味のしょっぱい食事 5 わたしはもらいご? 6 初恋は永遠に 7 たらふく食った道草 8 少女がおとなになるとき 9 トースター到来 10 モダンボーイの文化革命 11 作家になりたい小学生 12『にんじん』の花嫁 14 ガリ版刷りに秘めた別れ おわりに
「私が少女期の苦境を脱することができたのは、幼い頭で自分なりに必死に考えた成果 や、家族や友だちからもたらされた知恵や励ましによってのことが多かった。
昭和二〇年代の戦後という、一般家庭には電話もテレビも車もなく、物や情報の ほとんどない時代には、家族や学校の先生や友人たち生身の人間に甘え、頼り、すがることで物事は解決されたのだった。そして人々は優しく、時に厳しく、ひ との悩みに答えてくれた。」ーーはじめにより
少女の物語ですが、昔の少女、今の少女、これからの少女にもよんでいただきたい。こ の物語の少女シズカは、こう言っています。「あなただけでない、誰もが悩み 苦しみ、そうして幸せになる。だから勇気を出して」と。現代の少年少女たちの心と耳に届けば幸いです。
岩波書店 ホームページ http://www.iwanami.co.jp/hensyu/index.html
サクラと小さな丘の生きものがたり(創作)
ぷねうま舎刊 2016年4月初版
これまでの著書とはひと味違います。創作短編連作。ジュニアからおとなの方に読んでいただきたい、平和な暮らしの中にある死と再生の物語。
「桜が咲くとき、忘れてはならない 思い出が・・・・・・」オビより
目次
一部 願い
ヤマボウシの喜び ハナさんの誓い
走るタヌキ 掘ったのは誰?
あたたかさは五回 ロージーのしあわせ
花飾りとピンク帽 お願い、お月さま
二部 奇跡
天使がきた あなたのままで 花のカーペット
サクラの桜の木 夏の女王は
虹を越えて海へ 幻の再会 生きる力
ずっと経って
ぷねうま舎 http://www.pneumasha.com/2016/03/29/サクラと
書評のご紹介
・Goldl In Them Hills ・2016.09.24 土
「現代美術作家がつぶやくレヴューや精査詩のまつわる日々徒然」 MUさん
鶴田静さんの、ファンタジー小説です。
優れたファンタジーが持つ、力強いメッセージ性と哲学が込められた物語です。
小さな丘に住む夫婦と、彼らを取り巻く森と生きものたちの日々が語られます。
夫婦と動物たち、植物たちが語り合い、心を通わせ、物語は語られていきます。
私はてっきり児童書だとばかり思っていましたが、最初の数ページで涙が止まらなくなり、全部読み終わるのに随分時間がかかりました。
3月11日の震災にまつわるストーリーだとは知らずに読みましたが、読み進めるとどんどんその影が迫ってきます。
まるで桃源郷のように美しい小さな丘に差す影。
私たちの日常には今、どれぐらいその影が覆っているでしょうか。
気にしなければ気にしないで済む程度になっていませんか。
私たちは、日々を幸せに過ごせればいいのです。
朝、目覚め、仕事をし、食事をし、仲間や家族と笑い合う、それが一番の幸せだと思うでしょう。
一人孤独に生きていたとしても、日々やるべきことを果たすことで、孤独ながらも生きることに喜びを見出せるのです。
でも、影を追いやることができなかったらどうでしょう。
怯え、恐れ、苦しみに満ちた日々でしょう。
だからなるべく思い出さないように、やり過ごすのです。光と影のバランスが大事です。
放射能は漏れ続け、止めることができないでいるのに、やれミサイルが飛んできた、貧しく若い奴らは戦えと世間は言います。
闇を忘れ光も消すような行為が目に付きます。良いとは思えません。
帰るべき故郷を失うことが人生を失うに等しいと感じる人々が、未だに苦しみ続けている。
自分の命より大切だと思っていた子供を失い、それでもなお生き続けることの苦痛から逃れることができないままでいる。
人間の悲しみは自分が人間であり続ける限り、避けられない。
そもそも肉体という檻の中に魂が閉じ込められているのが人間。
理想に生きるのは難しい、そもそもアンバランスな存在なのです。
そしていつの間にか、避けられないことを避けて行き、ゆがんでくる。
その方が「楽だと感じる」からだ。
暗闇はどんどん濃さを増し、人間にのしかかってくる。
芸術家は闇と光を持たねばならいと私は思っているので、闇を消したり光を消したりはしないで生きてきた。これは簡単なことではなく、時に耐えがたい。
目を見開けば影が覆うこの世界に生きる私たち。
この物語の世界観で生きてみたらどうだろうか?
この物語のような世界に自分は生きられると考えてみたらどうだろうか?
この物語の登場人物である夫婦の、自然と共に、優しい心を持ったまま生き続ける姿のそばに、同じ生き物である動物や植物が、夫妻の思っている以上に彼らに心を寄せて生きている様子が描き出されている。
この夫婦が願っている以上に、自然は彼らに寄り添い、叶えられなかった夢を叶えてくれる。
自然であることが、超自然を引き寄せ、私たちに神の掌を垣間見せてくれる。
この物語の登場人物は、深い悲しみを乗り越えたところにいます。
乗り越えようとしているのではなく、一旦乗り越えたのです。
多くの物語は、乗り越えたところで終わります。
そこから先は読者の問題として放たれて終わる場合が多いのですが、この物語はその後があるのです。
乗り越えた先に何があるのか。
人それぞれなのでしょうか?
私はそれは等しく、平等に、同じものが訪れるのではないかと感じます。
慈愛と言えば良いのでしょうか。
穏やか何かが訪れるのだと思います。
でも、それを見つけるのは容易ではないかもしれません。
だからこそ、見つけられていなければ、乗り越えたと言えないのではないでしょうか。
この物語の最後の2章、「虹を越えて海へ」「幻の再会 生きる力」は、とても美しい世界です。
可愛い子犬たちが出てくるのですが、本当に愛らしい。
彼らのおかげで最後まで読みきれた気がします。
鶴田静さんの文体は優しく、愛情に溢れている。
そしていつも、力強いメッセージにあふれてる。
彼女の表現の源である「自然と共に生きる」というメッセージ。
自然と共に生きるしか救われる術はないことを、人はもっと意識すべきだと思う。
私はこの物語に出てくる言葉一つ一つに心を揺さぶられて、ページごとに涙が出てしまった。
すぐにこうしてレヴューもできないほど、心が動揺し、涙に溢れてしまった。
こんなふうになったら、体力気力が充実した時でないと、言葉が出てこない。
この物語を読み終えて数ヶ月、ようやく向き合えた。
それほど、深い情感を呼び覚ます物語だった。
苦悩や悲しみよりも、笑顔や愛が私を泣かせるのである。
この理不尽な世界では、人々は愛で団結することができない。
爆弾で(戦いで)しか手を繋げない。
そんな世界で愛を持つことが、私を泣かせるのだ。(完)
このような長文のご感想を書いて下さったMUさんに、心から感謝申し上げます。
(鶴田 静)
1.
『サクラと小さな丘の生きものがたり』にはいろいろな思いがギュッと詰めこまれ、文章と文章の間にゆとりがあって、読み手が勝手に自分の思い出を逍遥できる。ヤマボウシ、サクラ、ラッパズイセン、カボチャ、ピーナッツ、竹、クローバーなどたくさんの植物、タヌキ、イノシシ、ウサギ、イルカ、犬に猫などなど、生きものたちがそれぞれ人格を持っている。一話ごとのエピソートは情緒的で時間の流れもゆっくりだが、この星が何者かのせいで息苦しくなっていく現実がビシッと指摘されている。声を荒げることなく「言いたい事を言う」状況設定である。(60代 女性)
2.
主人公の夫婦の生きとし生けるものとの交流、心が温まります。「人と動物、天と地、これらが種の違いを超えて共存することから、生きものそれぞれが生きる力を与えられ、それぞれが生かされている。」まさに、ベジタリアンのサンクチュアリが描かれた素晴らしい作品だと思います。(50代 男性)
3.
著者の想いが良く伝わってきました。これまでの体験や歴史に裏付けられていますね。現在の世の中の問題を、評論のように難しく言うのでなく、誰にでも分かりやすく描かれています。文章や言葉も、素敵に書かれています。イラストもやわらかく、本の手触りがとてもあたたかく感じられます。(40代 女性)
.4
はじめは1節、1節が違う話と思って読んでいると、同じ登場人物が出て来て、繋がっていることに気づきました。終わりの「幻の生きる力」で、色々ななぞが解け、大きな輪に繋がったように思えました。地球に生きるいきものたち、花、鳥、木、犬や猫、そして人間、色々な悲しみを体験しながらも、前向きに生きる物語、そして大きな生命の循環、その中に生きる私たちなのですね。(50代男性)
5
このお話は大人がよんでも十分。考えさせられる内容でもあり、沢山の動物たちが魅力的でした。涙がこぼれる所もありました。
小さな子どもでも優しくお母さんがよんであげたら、十分伝わる内容です。(二宮記代美さん)
皆さまありがとうございまシタ。
下記の塚本氏のエッセイはミニコミ誌「街から」に掲載されました。その一部です。
発行 株式会社街から舎 編集発行人 本間健彦 http://www.machikara.net/
『森のおうちの贈り物』(冊子)
一話 アマンダ・ウィリアムズ作/訳・補作・
挿画・鶴田 静
ニ話 作鶴田 静/写真 エドワード・レビンソン
令和2年度文化庁芸術家活動継続支援助成金による自家出版。2021
(当サイトの初めに詳細が掲載されています。)